2024年02月24日
当院で行われている硬膜外無痛分娩という方法は、脊椎の手術で異物が挿入されている場合には一般的には感染のリスクがあることや、効果にばらつきがあることから、硬膜外鎮痛ができない施設がほとんどです。
当施設では今まで、なるべく多くの方に無痛分娩を提供できる施設を目指しており、側弯症のかたや、腰椎ヘルニアの方など脊椎に変形や疾患がある方も全て受けてきました。
このたび、脊椎に広範囲に手術創があり、ロッドと呼ばれる医療器具が挿入されている妊婦の方が無痛分娩を希望され来院されました。
ご本人と相談し、硬膜外鎮痛を主体として補助的に非薬物療法による鎮痛を併用し、痛みがないお産ができましたのでご紹介いたします。十分な感染対策を行い、硬膜外カテーテルを挿入し、痛いときでも2/10くらいの痛み(10点がマックスの痛みとすると、2点くらいという意味)で鎮痛薬を使用し痛みはゼロになりました。その後の出産時の痛みもゼロでした。
今回出産された方は他の複数の施設で無痛分娩を断られ、ダメもとで当院に来院された方でした。当院では、なるべく断らない無痛分娩を行っていきたいと思います。そのためにも予想される合併症やリスクは麻酔科外来でお話しします。なるべくご期待に沿える形で産痛緩和を行いたいと思います。
無痛分娩を希望されている方は、はじめから諦めずに、一度当院の麻酔科外来を受診してみてください。
注釈:今回の内容記載に関しましてはご本人に許可をいただき、記載させていただいております。今後学会発表で硬膜外無痛分娩の適応について発表予定です。
2024年02月09日
12月5日に助産師さん、看護師さんを対象とした無痛分娩のハンドブックを出版いたしました。
無痛分娩 症状アセスメントポケットマニュアル:麻酔導入~分娩中・翌日以降のトラブルの「原因と対処法」がわかる | 林 聡, 柏木 邦友 |本 | 通販 | Amazon
この本のなかでは、助産師さん、看護師さんにどのようなことが起こったら異常なのか、医師を呼ぶべきなのか、問題となる合併症は何かなどを記載しています。無痛分娩中の妊婦さんに最も長くかかわる医療従事者は、助産師、看護師さんです。助産師、看護師さんが十分な知識を持って、無痛分娩に関わることで、何か異常が起こっても早期発見し、直ちに対応する事で、あらゆる合併症を予防し、大きな後遺症となることなく退院することができるようになります。
ハンドブックにすることで、本の内容を記憶しなくても、必要な時にポケットから取り出して見てもらえれば、覚えていることと同じになります。
東京マザーズクリニックだけでなく、あらゆる施設で無痛分娩のトラブルが起きないように願っています。
2024年02月02日
3回にわたって帝王切開から術後の痛みまでお話をしましたが、最後に他院と比較して当院が術後鎮痛に優れている点についてお話をしたいと思います。
それは硬膜外鎮痛を行うことです。実は徐々に硬膜外鎮痛を行う施設が少なくなってきています。硬膜外鎮痛を挿入するための医師の煩雑性、術後に血栓を予防する薬剤を使用することで起こる硬膜外鎮痛の煩雑性、スタッフによる硬膜外鎮痛に対する知識不足などです。
硬膜外鎮痛に代わって行われる方法が、麻薬をクモ膜下という場所に入れてくる方法や、アセリオというカロナールの点滴用の薬剤を使用する方法ですが、いずれも効果としては弱いと感じます。
強い痛みは必要ないと考える我々は積極的に痛みを取っていきます。痛みを取ることで、歩行を促し、赤ちゃんのお世話にも積極的に取り組んでいただいたほうが良いと考えますので、痛みに我慢することのない産後を送っていただきたいと思います。
2024年01月26日
前回は予定帝王切開のお話をしましたが、今回は無痛分娩から緊急帝王切開になった場合のお話をします。無痛分娩で経腟分娩を希望していた皆様が、突然帝王切開をしなければならないとなったとき、身体の痛みまで残るととてもつらいと思います。ですので、無痛分娩と同様になるべく痛みを取り除くような術後鎮痛を行います。
方法は予定帝王切開と同じ硬膜外鎮痛を行います。無痛分娩では腰のあたりからカテーテル挿入を行いますが、帝王切開の術後鎮痛には無痛分娩用のカテーテルの位置は不向きなため、カテーテルを入れ替える必要があります。もしご希望がなければ入れ替えない方法を考えますが、圧倒的に痛みに関しては入れ替えた硬膜外鎮痛のほうが痛みは取れますのでお勧めします。
もし帝王切開になったとしてもなるべく痛みを取り除くようにしますので、ご安心ください。
2024年01月19日
前回帝王切開の痛みについてお話ししましたが、今回は術後の痛みについてお話しします。帝王切開には予定帝王切開と緊急帝王切開があり、今回は予定帝王切開を、次回に緊急帝王切開のお話をしたいと思います。
術後の痛みに対しては硬膜外鎮痛を行うことで、痛みを緩和させます。硬膜外鎮痛は無痛分娩でも用いられるもので、安全でありながら、しっかり痛みを取ることができます。出産の痛みだって取り除くわけですから、術後の傷の痛みだって、大丈夫になるわけです。
手術翌々日の朝に硬膜外鎮痛を止めて、内服の鎮痛薬に切り替えます。もしご希望があれば、1日硬膜外鎮痛を延長することもできます。
退院後には硬膜外鎮痛はできませんので、内服などで痛みをコントロールできないといけないわけです。内服だけで不十分な場合は薬剤や投与方法など色々な種類の薬剤を使い、痛みを取っていきます。もちろんお母さんにとっても、赤ちゃんにとっても安全なもの使用します。痛いから歩かない、赤ちゃんのお世話をしないということにならないようにしたいと思っています。